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各論
第1編  健康の確保と増進
第3章  医療保険
第2節  医療保険の各制度
2  健康保険


 健康保険は,政府管掌健康保険と組合管掌健康保険の2本立てで運営されている。政府管掌健康保険は,政府が保険者となって運営するものであり,健康保険の被保険者となっている者のうち健康保険組合の組合員でない者を一括してその被保険者としている。また,組合管掌健康保険は,厚生大臣の認可を受けて職域単位に設立された各健康保険組合が保険者となって運営するものであり,それぞれの事業所の従業員をその被保険者としている。


(1)  政府管掌健康保険


  適用状況

 近年における政府管掌健康保険の適用事業所数は,49年度末に74万3,000であったが,53年度末には81万6,000と年々増加してきている。

 被保険者数の動きは,第1-3-5図に示すとおり,51年度から増加傾向にあり,53年度末には1,381万人と前年度に比して28万人増加した。また,1事業所当たりの被保険者数は,49年度末に17.9人であったが,53年度末には16.9人と減少している。

第1-3-5図 政府管掌健康保険の被保険者数と被扶養者数

 被扶養者数は,53年度末には1,590万人と49年度末より10.3%増加し,被保険者1人当たりの被扶養者数をみても,49年度末の1,083人が53年度末1,151人と増加が著しい。

第1-3-5表 政府管掌健康保険の平均標準報酬月額の推移




  標準報酬

 健康保険では,保険料及び現金給付の額は,被保険者の標準報酬を基礎として算定される。この標準報酬とは,保険料の徴収及び現金給付に関する事務上の便宜を図るため,被保険者の受ける報酬について段階を設け,各被保険者の受ける報酬をそれぞれ一定額に標準化したものである。

 平均標準報酬月額は,労働者の平均賃金の動きを反映するが,近年における動きは第1-3-5表に示すとおり毎年度伸びており,最近では51年度と52年度に標準報酬の上限の引上げが行われたため,賃金の伸びより大きくなっている。


  保険給付

 保険給付は,被保険者本人に対するものとして,療養の給付,療養費,傷病手当金,出産手当金,分べん費,育児手当金及び埋葬料(費)の支給があり,被扶養者に対するものとしては,家族療養費,高額療養費,配偶者分べん費,配偶者育児手当金及び家族埋葬料の支給がある。

 保険給付費の動向をみると,49年度は1兆2,624億円であったが,53年度には2兆3,054億円と1.8倍となっている。また,被保険者1人当たりでは53年度16万7,252円となっている。

    (ア) 療養の給付及び家族療養費

     療養の給付は,被保険者に対して,病院,診療所又は薬局において診察,手術,薬剤の支給,入院,看護等の現物給付を行うものであり,家族療養費は,被扶養者に対して被保険者と同様の給付について,その7割を支給するものである。

     療養の給付に要する費用は,49年度の7,867億円が,53年度には1兆3,212億円と1.7倍になっており,家族療養費は,49年度の3,713億円が,53年度には7,768億円と2.1倍の増加を示している。この内容を見てみると第1-3-6表のとおりであり,療養の給付等に要する費用の増加は診療1日当たり金額の大幅な増加が大きな原因である。すなわち,被保険者の診療1日当たり金額の平均は,49年度2,263円から53年度3,857円と1.7倍に,同じく被扶養者については,49年度1,292円から53年度2,431円と1.9倍の増加となっている。

    第1-3-6表 政府管掌健康保険の医療給付の状況


    (イ) 傷病手当金

     現金給付の中心である傷病手当金は,被保険者が療養のため働けない場合で,賃金が受けられないときに,4日目から労務不能の期間中1年6か月を限度として,1日につき標準報酬日額の6割を支給し,その間の生活の安定に資することを目的とするものである。

     傷病手当金の支給総額は,49年度の574億円から53年度には1,042億円と1.8倍に増加している。




  福祉施設及び保健施設

 健康保険では,被保険者及び被扶養者の疾病,負傷の療養又は健康の保持増進を図るため,病院及び診療所の設置(53年度現在,病院55か所,診療所8か所)疾病予防検査の実施等の事業を行っている。


  保険料

 保険料額は,前述の標準報酬月額に保険料率を乗じて算出され,事業主と被保険者とが折半して負担することになっており,政府管掌健康保険の保険料率は,53年2月から1,000分の80となっている。また,53年1月からは,賞与等に対しても,1,000分の10の特別保険料が課されることになった(うち1,000分の2については,国庫が負担することとされている。)。53年度の事業主に対する特別保険料徴収決定済額は,404億円であり,保険料全体の2.1%を占めている。

 53年度の保険料収納率は98.6%と前年度に比して0.2%上がった。


  保険財政

 近年における政府管掌健康保険の収支状況は,第1-3-7表に示すとおりである。

第1-3-7表 政府管掌健康保険財政状況

 健康保険財政については,最近の経済情勢の低迷による保険料収入の伸び悩み及び予想を上回る給付の増加等に伴い,収支不足が生じることになった。このため51年度及ぴ52年度においては,2度にわたる法律改正等を実施し,標準報酬の上限の改定,保険料率の改定,特別保険料の創設によって健康保険財政の収支状況の改善が図られた。

 53年度は,全国的な暖冬の影響によってインフルエンザが流行しなかったこと等により,単年度において126億円の黒字となったが,49年度以降の累積収支不足額は53年度末において依然として1,267億円にも達しており,財政的に極めて憂慮すべき事態が続いている。


(2)  組合管掌健康保険


  健康保険組合数

 健康保険組合の設立状況は,51年度には24組合,52年度は11組合,53年度は3組合と推移してきており,53年度末の組合数は1,665組合となっている。

 1組合当たり平均被保険者数は,53年度末で6,653人である。また,5,000人未満の組合数が全体の66.5%を占めている。

第1-3-7図 組合管掌健康保険の平均標準報酬月額の年次推移

第1-3-10表 種類別附加給付実施健康保険組合数




  適用状況

 組合を設立している事業所数は,年々増加はしているが,伸び率は鈍化傾向にあり,53年度末で12万548事業所となっている。

 被保険者数も第1-3-6図のとおり毎年伸びており,被扶養者数も増加している。

第1-3-6図 組合管掌健康保険の被保険者数と被扶養者数

 なお,被保険者1人当たりの被扶養者数は53年度末において1.43人となっている。


  標準報酬

 標準報酬月額は,第1-3-7図のとおり毎年増加している。最近の景気の後退,安定成長への移行に伴い賃金上昇率は鈍化しているが,52年度及び53年度の上昇率は標準報酬月額の上限引上げがあったため,それぞれ10.6%,5.7%となっている。


  保険給付

 組合管掌健康保険では,政府管掌健康保険と同様の法定給付を行うほか,これに併せて,規約の定めるところにより,附加給付を行うことができる。

 保険給付のうち,療養の給付,家族療養費及び傷病手当金等について最近の状況をみると次のとおりである。

    (ア) 療養の給付及び家族療養費

     被保険者の療養の給付費は,48年度の3,378億円が,52年度には6,711億円と4年間で約2.0倍になっており,家族療養費については,同じく2,058億円から5,923億円と約2.9倍の増加になっている。

     この間被保険者数及び被扶養者数は約1.1倍に増加しているに過ぎないのに比し,被保険者の療養の給付の増加は顕著であり,家族療養費も激増している。

     この内容を分析してみると,第1-3-8表に示すとおり診療1件当たり日数は,被保険者及び被扶養者ともに漸減の傾向にあるものの,受診率は被保険者及び被扶養者ともに増加しつつあり,また,診療1日当たり金額は著しい増加傾向を示している。

    第1-3-8表 組合管掌健康保険の医療給付の状況


    (イ) 高額療養費

     高額療養費は,48年10月1日から実施された制度であり,53年度の給付額は約186億円となっている。

    (ウ) 傷病手当金

     傷病手当金は,第1-3-9表のとおり,被保険者1,000人当たり件数及び被保険者1人当たり日数は減少しているが,被保険者1人当たり金額及び1件当たり金額は増加している。また,支給総額では,48年度の232億円から52年度の364億円へと約57%増加している。このように支給総額が増加したのは,傷病手当金の額が報酬に比例しているため賃金の上昇が傷病手当金の支給額にはね返ったからである。

    第1-3-9表 組合管掌健康保険傷病手当金給付状況


    (エ) 附加給付

     健康保険組合における附加給付の実施状況は第1-3-10表のとおりであり,全体の96%に当たる組合が実施している。

     附加給付に要する費用は,52年度においては総額772億円,被保険者1人当たりでは6,916円であり,保険給付費中に占める割合は5.2%になっている。




  福祉施設及び保健施設

 組合管掌健康保険では,個々の組合の被保険者の状況等に即して,被保険者等の疾病予防のため保健指導や,健康管理センター,保養所の設置運営等の事業が行われている。ことに近年,疾病の治療から予防への動きが活発となり,各種検診等健康管理の事業が重視されてきている。


  保険料

 組合管掌健康保険における保険料率は,標準報酬月額の1,000分の30から1,000分の90の範囲内で各組合ごとに決定される。

 組合管掌健康保険の平均保険料率は,第1-3-11表のとおりであり,近年における医療給付費の増加を反映して年々引き上げられている。

第1-3-11表 組合管掌健康保険平均保険料率及び負担割合の推移

 また,事業主が保険料額の2分の1を超えて負担することができ,現実に事業主の負担割合が被保険者のそれを超えている組合が多く,保険料の平均負担割合は,52年度末で事業主57.30%,被保険者42.70%となっている。

 保険料率が法定の上限(1,000分の90)に達している組合数は,50年度末の58組合(3.5%)から,53年度末には161組合(9.7%)に増加し,財政状況の悪化を示している。

 なお,53年1月から健康保険法等の一部を改正する法律が実施されたことにより,健康保険組合は規約の定めるところにより,1,000分の10以下の料率で賞与等から特別保険料を徴収することができるものとされている。


  保険財政

 健康保険組合の財政は,原則として保険料で賄うことになっているが,事務費については,予算の範囲内で国庫が負担している。

 また,特に財政基盤の弱い組合に対しては,33年度から国庫補助が行われており,54年度では総額15億円となっている。

 組合の財政収支は,第1-3-12表のとおりであるが,最近は,医療給付費の急激な増加等による支出の伸びが著しく,収入の伸びを上回る傾向がみられ,財政状況の窮迫した組合が増加してきている。

第1-3-12表 組合管掌健康保険収支状況


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