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各論
第1編  国民の健康の確保と増進はどのように行なわれているか
第5章  医療保険
第2節  医療保険の各制度
2  健康保険


 健康保険は,被保険者の業務外の事由による疾病,負傷,死亡または分娩について保険給付を行ない,あわせてその被扶養者のこれらの保険事故について保険給付を行なう制度であり,政府管掌健康保険と組合管掌健康保険の2本立てで運営されている。

 政府管掌健康保険は,政府が保険者となつて運営するものであり,健康保険の被保険者となつている者のうち健康保険組合の組合員でない者を一括してその被保険者としている。また,組合管掌健康保険は,厚生大臣の認可を受けて職域単位に設立された各健康保険組合が保険者となつて運営するものであり,それぞれの事業所の従業員をその被保険者としている。


(1)  政府管掌健康保険


  

 近年における政府管掌健康保険の事業所の推移は第1-5-5図に示すとおり毎年約2万5,000前後の事業所が増加しており,45年度末の事業所数は66万となつている。

第1-5-5図 政府管掌健康保険適用事業所数

 被保険者数の動きは第1-5-6図に示すような増加傾向にあり,45年度末の被保険者数は,1,318万人に達し,40年度の被保険者数と比較すると,この5年間に12.6%増加している。これを対前年度増加率でみると,41年度4.3%,42年度2.7%,43年度2.6%,44年度2.3%,45年度0.2%である。また,1事業所当たりの被保険者数は,40年度末には21.8人であつたものが,その後やや減少し,45年度末には20.0人となつている。被扶養数者は,40年度から5年間で6.7%の増加をみ,45年度末で1,284万人となつている。被保険者1人当たりの被扶養者数をみると,40年度末で1.03人であつたのが,45年度末には0.97人となつている。

第1-5-6図 政府管掌健康保険の被保険者数と被扶養者数




  標準報酬

 健康保険では,保険料の額および傷病手当金等の現金給付の額は,当該被保険者の標準報酬を基礎として算定される。このような標準報酬制度とは,保険料の徴収および現金給付に関する事務上の便宜を図るため,被保険者の受ける報酬について段階を設け,各被保険者の受ける報酬をそれぞれの定額に標準化したものである。

 平均標準報酬月額は,労働者の平均賃金の動きを反映するが,近年における動きは第1-5-7図に示すとおり毎年度平均して5,000円前後の増加を示しており,過去5年間の伸びは1.9倍となつている。特に45年度末では,4万9,960円と前年度に比べ6,000円を上回る増加を示している。

第1-5-7図 政府管掌健康保険の平均標準報酬月額の推移




  保険給付

 保険給付には,被保険者本人に対するものとして療養の給付,療養費,傷病手当金,出産手当金,分娩費,育児手当金および埋葬料(または埋葬費)の支給があり,被扶養者に対するものとしては,家族療養費,配偶者分娩費,配偶者育児手当金および家族埋葬料の支給がある。まず,保険給付費の動きをみると40年度では2,715億円であつたがその後毎年度平均600億円程度増加し,45年度においては,5,862億円となり,40年度の2.2倍となつている。これを1人当たりでみると40年度では2万3,197円であつたが,その後毎年度平均約4,200円増加し,45年度には4万4,066円となり40年度の1.9倍となつている。

 ところで,保険給付費を構成する各給付の金額の面からみると,療養の給付と家族療養費が大部分を占めており,これにつぐものが傷病手当金となつている。


(ア)  療養の給付および家族療養費

 療養の給付は,被保険者に対して,病院,診療所において診察,手術,薬剤の支給,入院,看護などを行なうものであり,家族療養費の支給は,被扶養者に対してこれらの給付を行なうものである。

 療養の給付費は,40年度の2,017億円が,45年度には4,380億円と5年間にほぼ2.2倍になつており,家族療養費についても40年度414億円が45年度には948億円とほぼ2.3倍の増加を示している。この間被保険者数は12.6%,被扶養者数は6.7%増加しているが療養費の増加はこれを大きく上回つているわけである。この内容をみてみると第1-5-9表のとおりであり,療養の給付費の増加には1日当たり金額の大幅な増加が大きな原因となつている。

第1-5-9表 政府管掌健康保険の医療給付の状況




(イ)  傷病手当金

 傷病手当金は,被保険者が療養のため働けない場合で賃金がもらえないときに,4日目から労務不能の期間中,6か月(結核性疾患の場合は1年6か月)を限度として,1日につき標準報酬日額の6割を支給し,その間の生活の安定に資することを目的とするものである。

 傷病手当金の支給総額は,40年度208億円から45年度には363億円と1.7倍に増加している。過去5年間における被保険者1人当たり支給額の増加傾向は第1-5-10表に示すとおり,かなり著しいが,これは賃金上昇による平均標準報酬月額の伸びによるものであるといえよう。

第1-5-10表 政府管掌健康保険傷病手当金給付の状況




(ウ)  その他の給付

 傷病手当金以外の現金給付費の動きをみると出産手当金は40年度に23億円であつたが,45年度には49億円と2.1倍の増加をみせている。


  保健施設

 健康保険では,被保険者または被扶養者の健康の保持増進,あるいは疾病予防をはかるため,病院および診療所の設置,保養所の運営,健康相談などの事業を行なつている。


  保険料

 41年4月以来65/1,000であつた政府管掌健康保険の保険料率は,42年8月から44年8月までの間,健保特例法によつて暫定的70/1,000とされたが,44年の健康保険法等の一部改正により,健保特例法の失効とともに本法の保険料率が改正され,44年9月以後も引き続き70/1,000と定められている。

 保険料額は保険料率を前述の標準報酬月額に乗じて算定され,この保険料額は事業主と被保険者とが折半して負担することになつている。保険料の収納状況をみると収納率は40年度,95.7%であつたのに対し,45年度は98.8%と大きく上昇し,戦後最高の成績を収めている。


  保険財政

 近年における政府管掌健康保険の収支状況は第1-5-11表に示すとおりである。財政収支の不均衡は45年度においても解消せず,国庫補助225億円の導入を行なつてもなお単年度383億円の赤字が生じ,累積赤字は実に1,786億円に達している。

第1-5-11表 政府管掌健康保険財政状況




(2)  組合管掌健康保険組合


  健康保険組合数

 近年における健康保険組合の設立数は,44年度には48,45年度には58と増加し,45年度末では,1,461組合となつている。1組合当たり平均被保険者数は,45年度末において約6,600名となつているが,1,000人から3,000人の組合数が全体の約53%を占め,最も多い。


  適用状況

 組合を設立している事業所数は第1-5-8図のとおり年々増加し,45年度末で約9万4,000となつている。

第1-5-8図 組合管掌健康保険の事業所数

 被保険者数も第1-5-9図にあるとおり事業所の増加に伴い毎年伸びている。

第1-5-9図 組合管掌健康保険の被保険者数と被扶養者数

 つぎに,被扶養者についてみると,40年度以降,漸増の傾向にあるが,被保険者数の増加率に比しやや下回つている。したがつて,被保険者1人当たり被扶養者数は年々減少の傾向にあり,45年度末においては1.19人となつている。


  標準報酬月額

 平均標準報酬月額は,第1-5-10図のとおり,40年度までは毎年7〜10%の上昇率を示していたが,41年度末では41年4月の法律改正により標準報酬月額の上限が5万2,000円から10万4,000円に引き上げられたことにより前年度対比で20%の上昇をみたが,42年度以降は10〜13%の上昇率となつている。

第1-5-10図 組合管掌健康保険の平均標準報酬月額の推移




  保険給付

 組合管掌健康保険では,政府管掌健康保険とまつたく同様な保険給付を行なうほか,これに合わせて規約に定めるところにより,付加給付を行なうことができることになつている。

 以下,保険給付のうち,療養の給付,家族療養費および傷病手当金などについて,最近の状況をみることにする。


(ア)  療養の給付および家族療養費

 被保険者の療養給付費は,40年度の974億円が44年度には1,784億円と4年間に約1.8倍になつており,家族療養費についても,同じく368億円から714億円と約1.9倍の増加を示している。この間の被保険者数および被扶養者数ともに約1.2倍に増加しているにすぎないから,医療費の増加がきわめて顕著であることがわかる。

 この内容を分析してみると,第1-5-12表のとおりであり,受診率は,被保険者については若干の動きがみられるが,被扶養者については漸増しており,診療1件当たり日数は,被保険者および被扶養者ともに漸減の傾向にあり,診療1日当たり金額は急増となつていて,医療費の増加の原因が診療1日当たり金額の伸びによるものであることがわかる。

第1-5-12表 組合管掌健康保険の医療給付の状況




(イ)  傷病手当金

 傷病手当金の支給額は,40年度の92億円から44年度の150億円と約63%増加しているが,その間被保険者数が約24%増加したことと平均標準報酬月額が約66%増加したことを考慮に入れると,相対的に減少していることになる。その内容をさらに分析したものが第1-5-13表であるが,件数および日数が減少の傾向にあるのに対して,金額は年々増加している。これは傷病手当金の額が報酬に比例しているため,賃金上昇に伴つて,増加したものと考えられる。

第1-5-13表 組合管掌健康保険傷病手当金給付状況




(ウ)  付加給付

 組合管掌健康保険の保険給付における特色は,各組合において付加給付が行なわれる点にある。その実施状況は, 第1-5-14表のとおりであつて,ほとんどの組合がこれを行なつている。

第1-5-14表 種類別付加給付実施健康保険組合数

 付加給付の種類は多岐にわたつているが,最も多く行なわれているものは被扶養者に対する家族療養費(法定5割給付)に加えて支給される家族療養付加金で,これによつて,組合における医療給付水準はかなり高められている。

 付加給付に要する費用は,45年度においては,総額472億円,被保険者1人当たり,4,929円であり,法定給付に対する割合は14.2%となつている。


  保健施設

 組合管掌健康保険の保健施設は,組合の設立母体企業における労働条件等の実情に適応した効果的な事業を行なうことが,大きな特色となつている。

 この保健施設事業は,近年,傷病の治療から予防への動きが活発となり,各種検診等健康管理が重視されつつある。

 保健施設費は,45年度において総額308億円,被保険者1人当たり3,220円であり,支出総額の約6.6%を占めている。


  保険料

 組合管掌健康保険における保険料率は標準報酬月額の30/1,000から80/1,000の範囲内で各組合ごとに決定される。

 また,その負担割合も,事業主が保険料額の1/2以上を負担することができ,現実に事業主の負担割合が被保険者のそれをこえている組合が多い。

 組合管掌健康保険の平均保険料率の推移は第1-5-15表のとおりであり,近年における保険財政の悪化を反映して年々引き上げが行なわれている。

第1-5-15表 組合管掌健康保険平均保険料率および負担割合の推移

 つぎに,保険料の負担割合については,45年度末で事業主58.1%,被保険者41.9%となつている。

 また,保険料率別の組合数をみると,45年度末において70/1,000の料率をとつている組合が最も多く全体の28.3%を占め,また,最高料率の80/1,000に達しているものは約9.8%となつている。ちなみに45年度末で保険料率70/1,000以上となつている組合数は850組合であり,全体の58.1%を占めている。


  保険財政

 健康保険組合の財政は,事務費については予算の範囲内で国庫が負担し,保険給付費,保険施設費等については,保険料でまかなうたてまえになつている。

 ただし,一部の財政基盤の弱い組合に対しては,33年度から若干の国庫補助が行なわれている。

 組合の財政収支は第1-5-16表のとおり,全体として健全な歩みを示しているが,石炭産業関係の組合のように財政力の弱い組合もあり,医療給付費の急激な増加による支出の伸びが収入のそれを上回る傾向がみられる。

第1-5-16表 組合管掌健康保険収支状況


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