〔2224〕 今回不況期に,就業者は製造業で減少したものの第3次産業で増加した。数のうえでは新規学卒者を中心とする若年層の就業分野の変化によるものが主体ではあったが,中高年齢層についても,産業間移動を通じて就業者の比重は製造業から第3次産業へと移動している(第2章参照)。
〔2225〕 総理府統計局「就業構造基本調査」によって,今回不況期(49〜52年)における第3次産業有業者の増加を業種別にみると,小売業とサービス業での増加が目立ち,特に飲食店(20.0%),飲食料品小売業(16.9%),医療(25.0%),教育(11.4%),専門サービス(19.6%),対事業所サービス(19.7%)での伸びが大きい。飲食料品小売業,対個人サービス業では,43〜49年間に有業者はむしろ減少気味であったが,49〜52年間に増加に転じた。これらの業種の有業者の増加は,雇用者の増加によるというよりは自営業主・家族従業者の増加による面が大きい(付属統計表第77,78,79,80表)。
卸売業・小売業,サービス業以外の産業については,電気・ガス・水道業の伸び率は比較的大きい(16.1%)が,金融・保険・不動産業(6.1%),運輸・通信業(2.8%)ともに今回不況期前に比較して伸びは鈍化している。
〔2226〕 このように第3次産業も今回不況期に生産停滞の影響を受けて,卸売業(5.5%)とか運輸・通信業といった生産との関連の強い産業で就業者の伸びは鈍化している。これに対し,小売業とかサービス業の就業者の増加は,1)国民のニーズの変化に伴って,医療,教育,外食への家計支出の増加がみられたこと(医療,教育などのサービス業,飲食店),2)サービスの外部化が進んでいること(対事業所サービス業)といった要因に加えて,3)小規模商業部門の就業者の増加による面が大きかったといえよう。
〔2227〕 第3次産業雇用者の増加を,企業規模別に高度成長期(43〜46年)と石油危機後(49〜52年)とで,卸売業・小売業とサービス業についてみると,雇用増加の寄与度は,いずれも大企業部門(300人以上)で小さくなり(卸売業・小売業は6.4%から1.4%,サービス業は2.5%から1.6%へそれぞれ減少),小企業部門(29人以下)で大きくなった(卸売業・小売業は3.5%から6.7%,サービス業は1.7%から4.1%へそれぞれ増加)。
このように第3次産業についても,石油危機後は高度成長期におけるような規模拡大がみられたわけではない(付属統計表第81表)。
〔2228〕 総理府統計局「事業所統計」によると,第3次産業で常用雇用が増加した業種は,高度成長期の44年から47年にかけては,214業種のうち166業種(78%)であったが,今回の不況期を含む47年から50年にかけては,224業種のうち140業種(63%)であり,この面からも,第3次産業が全体として景気後退の影響を受けたことをうかがうことができる。
第3次産業の事業所数と従業者数の増減状況により,事業所数も従業者数も増加した部門(A)と,事業所数は減少しているが従業者数は増加している部門(B)に分け,前者を従業者数の増加率が事業所数の増加率を上回って規模が拡大した部門(A1),従業者数の増加率が事業所数の増加率を下回って規模が縮小した部門(A2)に分ける。さらに従業者数が減少した部門(c)について,事業所数,従業者数ともに減少した部門(C1),事業所数は増加したが従業者数は減少した部門(C2)に分けて,それぞれの部門の従業者の変化を,従業上の地位別ないし雇用形態別に47〜50年間と44〜47年間とで比較すると次のとおりである。
〔2229〕 47〜50年間に,規模拡大を伴いながら従業者数が伸びた部門(A1)は77業種(34%)で,雇用者比率の高い業種が多く,そのなかには医療,教育,社会福祉といった公共サービス関連18業種が含まれているが,44〜47年間(76業種,36%)に比べると,常用雇用は123万人増から62万人増へと増加幅が大幅に縮小した。しかし,臨時・日雇雇用は11万人増から27万人増と増加幅が大きくなり,業主・家族従業者・有給役員も20万人増から26万人増となった。規模縮小を伴いながら従業者数が増えた部門(A2)は63業種(28%,すし屋,喫茶店,遊戯場,広告業,洗たく業,美容業など)で,44〜47年間(65業種,30%)に比べると,常用雇用は98万人増から25万人増へ増加幅が小さくなった。しかし,臨時・日雇雇用の増加数は2万人から20万人へ大幅に増えた。業主・家族従業者・有給役員の増加数は26万人から21万人になった。
事業所数が減って従業者数が増えた部門(B)は23業種(10%,そぼ・うどん店など)で,44〜47年間(22業種,10%)に比べると常用雇用の増加数は13万人から11万人とあまり変化はなかった。臨時・日雇雇用,業主,家族従業者・有給役員の変化も44〜47年間とあまり変わらなかった。
事業所数が減り従業者数も減った部門(C1)は44業種(20%,鮮魚小売業,菓子・パン小売業,野菜・果実小売業,金物・荒物小売業,洗張・染物業など)で,業種の数では44〜47年間(35業種,16%)に比べて増加し,常用雇用は17万人減から21万人減へ減少幅が大きくなった。しかし,44〜47年間に2万人減であった臨時・日雇雇用は2万人増と増加に転じた。業主・家族従業者・有給役員は9万人減が8万人減となった。
事業所数は増えたが従業者数は減つた部門(C2)は17業種(8%,機械器具卸売業,呉服小売業, 一般旅客自動車業など)で,44〜47年間( 16業種,7%)に比べて常用雇用は17万人減から21万人減へと減少幅が大きくなったが,臨時・日雇雇用は横ばいから3万人の増加となり,業主・家族従業者・有給役員も1万人減から3万人の増加に転じた。以上のことを,各部門ごとの増加寄与度でみると次のとおりである。
〔2230〕 47〜50年間の従業者の増加は6.3%であったが,このうち4.7%はA1部門の従業者の増加によるものであり (44〜47年間は従業者の増加率11.7%のうち7.0%),またそのうち1.3%はサービス関連18業種での増加によるものであった(44〜47年間は17業種で1.3%)。

このように47〜50年間においても,雇用者比率の高い近代的な部門で従業者が伸び(A1),在来型零細事業所は消滅している(C1)。しかし,47年から50年にかけての第3次産業全体の従業者の動きを,従業上の地位別ないし雇用形態別に44〜47年間のそれと比較すると,常用雇用の増加は大幅に縮小し(9.7%から2。5%),臨時・日雇雇用の増加はむしろ大きくなり(0.5%から2.1%),特に事業所数,従業者数ともに減少している部門(C,)や,事業所数は増加したが従業者数の減少している部門(C2)で減少ないし横ばいから増加に転じた。また,業主・家族従業者・有給役員については,全体として増加率が若干高まり(1.5%から1.7%),特に従業者数の減少している部門(C2)で増加に転じた(第28図)。
〔2231〕 次に,第3次産業の各産業について,商業部門は別として,各産業ごとにサービスの性格によって,財貨関連サービス部門(道路貨物運送業等),]財貨非関連サービス部門(生命保険を除く金融・保険業,情報サービス業等),生活関連サービス部門(生命保険業,対個人サービス業等),余暇関連サービス部門(旅館業,映画業,娯楽業等),公共サービス部門(医療,保健,教育,社会保険,社会福祉等)に区分し,従業者数の増減状況を47〜50年間と44〜47年間で比較してみよう(第29図)。47〜50年間に従業者数の増加が比較的堅調であったのは,小売業と財貨非関連サービス部門,運輸通信業以外の公共サービス部門である。卸売業と財貨関連サービス部門(運輸通信業)では,増加率の鈍化が目立っている。こうした部門は,今回不況期における生産停滞の影響が大きかったからである。従業者の中身についてみると,増加寄与度でみるかぎり業主・家族従業者の伸びはそれほど鈍化していない。そして有給役員の伸びは総じて高まっている(付属統計表第82表)。商業部門について,個人企業と法人企業とに分け,それぞれ業主・家族従業者と有給役員の増減をみると,卸売業・小売業ともに法人企業の有給役員の増加率はむしろ高まっていて,最近における商業部門の事業所の増加形態を反映しているとみられる(付属統計表第83表)。
雇用者の増加は多くの部門で鈍化しているが,財貨非関連サービス部門(金融・保険業,サービス業)と運輸通信業以外の公共サービス部門(電気・ガス業,サービス業)ではそれほど鈍化していない。雇用者の中身をみても,これらの部門では常用雇用が比較的伸びているのに対し,その他の部門では,常用雇用に対して臨時・日雇雇用の増加寄与度が高まっているのが特徴である。特に卸売業,飲食店,サービス業のうち余暇関連サ-ビス部門では,常用雇用が減少しているなかで臨時・日雇雇用は増加している。

〔2232〕 次に,最近の第3次産業の労働生産性の動向を日本,アメリカ,西ドイツ3国について比較してみよう。今回不況期に,日本,アメリカ両国では第3次産業の就業者が増加したが,西ドイツではこの部門の就業者も全体としては停滞した。この間における各国の第3次産業の労働生産性の動きを比較してみると,就業者が微増にとどまった西ドイツの上昇が目立つ(付属統計表第73表)。
労働生産性の上昇率を,今回不況期(1973〜76年)とその前(1970〜73年)とで比較すると,西ドイツは2.4%から2.3%とほとんど差がないのに対し,我が国は5.4%から1.8%へ,アメリカも0.3%から-0.4%へと上昇鈍化がみられる。このように,アメリカとの比較でみれば我が国の労働生産性の伸びが特に低いとはいえない。しかし,製造業(100)との相対関係でみると,我が国の第3次産業の労働生産性は76年現在72で,アメリカ,西ドイツはそれぞれ96,90であるから,我が国の第3次産業の労働生産性が低位にあることは否定できない。これは,我が国ではサービス業のみならず,商業の労働生産性も低いことによる。我が国の商業の労働生産性は,製造業に対して50%弱の水準であるのに対し,アメリカ,西ドイツともに80%程度である。しかも,アメリカの場合,我が国に比較して第3次産業に短時間就業者が多いことも考慮しなければならない(例えば,卸売業・小売業における週35時間未満就労労働者の占める割合は,我が国が13%であるのに対し,アメリカは28%,またサービス業の場合,それぞれ17%と40%である。)。これは,第3次産業の各部門ごとの就業者構成にもかかわることで,我が国の場合,特に商業部門の就業者の比重が大きいからである(付属統計表第85表)。
〔2233〕 今後第3次産業の雇用が拡大していくとした場合,どのような部が発展をみるであろうか。3国について,第3次産業部門のやや長期的な男女別就業者数の変動を比較してみよう。1960年代,70年代を通じて,第3次産業就業者の増加に対する各部門ごとの増加寄与率をみると,我が国は男女とも卸売業・小売業の増加が目立ち,なかでも飲食店の伸びが大きい。飲食店はアメリカでも伸びている。これに対し,サービス業については,男女ともに我が国はアメリカ,西ドイツに比べて寄与率が低い。我が国の場合,特に女子については70年代に公共サービス部門の雇用増が著しい(付属統計表第86表)。今後,国民のニ-ズに対応して,こうした部門の雇用が引き続き増加するとすれば,就業機会の確保にもつながるといえよう。