ところで,雇用変化が以上のように第三次産業を中心としたものに変ってきたことについては,産業構造の変化や最近消費者の消費パターンが変化したことなどに対応して,第三次産業の内容が種々の点で変ってきていることの影響を見逃せない。
卸売小売業,サービス業の業種別従業者の伸び率および構成比の変化をみると,発展的な業種での比重の高まりが著しく,これらの業種の伸びが第三次産業の伸びをリードしているのがみられる。たとえば,「商業統計表」により卸売小売業の31〜35年,35〜39年の雇用の伸びを増加の寄与率の形でみると,衣服身のまわり品卸,代理仲立業などの停滞が顕著である反面,重化学工業化の進展により鉱物金属材料卸,機械器具卸など生産財,投資財関連業種の高まりが大きい。小売業についても同様で,食料品小売,自転車荷車小売,および織物衣服身のまわり品小売の寄与率が低下する一方,百貨店やスーパーマーケットの新増設を反映して各種商品小売が,また,耐久消費財の普及などを反映して家具建具什器小売での寄与率の伸びが大きくなっている( 第1-66表 )。

また,「事業所統計調査」によりサービス業についてみると,おおむね各業種とも35〜38年の伸びが32〜35年の伸びを上回るとともに,とくに対事業所サービスの伸びが大きくなっている。
業種別の構成比の変化をみると対個人サービス,映画,その他の修理業の構成比が減少する一方,対事業所サービス,自動車修理業,ガレージ業の伸びが大きく,大量生産体制に対応して流通関係サービス,生産付随サービスでの労働力需要が増大していることを示している。また,対事業所サービスにおいて30年代後半に入って,時代の新しい要求に答えたリース産業,広告代理業,ビル管理業,コンサルタントなど新業種が登場してきたことや,レジャーブームを反映して旅館や娯楽業での伸びが高まっていることも最近の特徴である( 第1-67表 )。

以上のような変化を反映して第三次産業では,規模別にみると規模の大きい事業所で雇用の増加が顕著である。卸売小売業について規模別の商店数および従業員数の構成比の変化をみると,卸売業の商店数では1〜4人規模の比重が,31年の53.1%から39年には46.0%へと低下する反面,30人以上の占める割合が2.6%から6.2%に高まっている。小売業についてもいぜん1〜4人規模の比重が圧倒的に高いものの,31年の92.1%から39年の89.6%へと低下している。とくに従業員数の規模別構成比をみると1〜4人規模の低下,30人以上規模の増加の傾向は一層顕著である( 第1-6図 )。
こうした傾向は,1事業所当りの平均従業員数の増加という形でもみられる。すなわち卸売小売業については,31年に1店当り3.1人だったものが,39年には4.1人にふえ,とくに卸売業では7.2人から11.0人に増加している。

なお,卸売業のなかでは代理仲立業で大幅に減少しているほかは,すべての業種でふえており,とくに機械器具卸,繊維品卸および鉱物金属材料卸のふえ方が大きい。これに対して,小売業では各種商品小売の伸びが大きく,その1店当りの規模では,35年以降百貨店以外にスーパー,マーケットのような多角経営の小売店が簇生したため,一時小さくなったが,35年から39年にかけては再びふえ,これらの部門で雇用が増加していることを示している。また,その他の小売業についても規模はいぜんとして小さいが全般的に大型化の傾向がみられる。この傾向は停滞的な業種においてもみられ,いわゆる階層分化の過程で規模の大きい事業所で販売効率を高め,従業員をふやしていることがうかがわれる( 第1-68表 )。

こうした傾向はサービス業においても同様にみられる。サービス業でも,対個人サービス等をのぞき,1事業所当りの従業員数はふえており,とくに対事業所サービス,映画を除く娯楽,教育でこれが顕著である( 第1-69表 )。

なお,第三次産業で雇用の伸びが大きいことについては,以上述べたような第三次産業自体の発展があったことのほか,第二次産業,とくに製造業での伸びの鈍化が間接的に影響していることも無視できないと思われる。第二次産業の雇用の伸びが鈍化した際に第三次産業が伸びる傾向は,30年以前にもみられたが,最近は規模の大きい事業所での伸びが堅調であること,および,賃金,所得の上昇率も大きいという点で当時とは異なっている。卸売小売業の賃金の動きをみると若年層を中心に著しく上昇し,製造業に対する格差は縮小しつつある( 第1-70表 )。

雇用者の賃金上昇とならんで,自営層の所得の上昇も大きい。37年まではおおむね減少傾向にあった卸売小売業,サービス業の自営層(自営業主および家族従業者)の数は,37年から40年にかけて再び増加したが,1人当りの業主の所得の上昇も,この時期には30年代の前半までとちがって製造業の雇用者の賃金および業主の所得の伸びを上回っている( 第1-71表 )。

既就業の転職者で販売,サービス職種に入職した者の賃金をみても,前職とくらべ賃金が保合いまたは上昇したものの割合は他の産業にくらべて多い。
40年上期の「雇用動向調査」によると,40年1〜6月の間に販売職種に転職した者は7万8千人であるが,このうち73%の者は,前職より賃金が10%以上高くなったかあまり変らなかったもので,この比率は他の職種に入職したものに比べて高い。また,サービス職種に転職した3万8千人についても,そのうち82%は賃金が上昇したか変らなかった者で,技能,生産工程作業職種に転職したもののそれの78%にくらべ高い。
もっとも,第三次産業の就業者の伸びが堅調であった要因としては,以上のように最近この部門の発展が著しく,その雇用吸収力がひきつづき増大していることのほか,小売業などの零細経営のうちでの近代化がすすまず,低生産性のものがいぜん根強く残存していることの影響もあると思われる。大都市ではその外延的な拡大により新興住宅地域が形成され,それに伴う事業所の新設などがみられるが,一方,人口の減少している後進地域においては既存事業所の休廃業は現在までのところ少なく,いわば就業者の伸びを消極的に下支えしている面のあることも否定できない。
都道府県別に人口の増減率と商店数の増減率の関係をみると,東京周辺の神奈川・埼玉・千葉,名古屋周辺の愛知・岐阜および大阪周辺の奈良などで商店数の伸びが高いが,一方,青森・岩手・秋田など東北地方,石川・福井など北陸地方および福岡・長崎など九州地方のように人口が減少し,実質的な需要が相対的に停滞しているとみられる地域においても商店数はかえって増加しているところ,あるいは人口の減少ほどに商店の減少が激しくないところが多い( 第1-7図 )。これには前述のような業主所得の上昇などもあって,労働移動の困離な小零細企業の業主や家族従業者などが低い生産性のもとで就業を継続せざるを得ない状態にあることも一つの要因になっていると思われる。卸売小売業自営業主の所得階級別の分布をみると,年間12万円未満の占める割合は,37年の18.7%から40年には10.7%に減少したものの,40万円以上の占める割合の増加(30.8%から47.7%)や雇用者の12万円未満の減少(22.6%から6.2%)に比べ変化の程度が小さい( 第1-72表 )。

